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和歌山県でのミカン栽培 × ドローン防除の最前線
〜ベテラン農家・小谷大藏さんが挑むスマート農業〜
今回の導入事例では、100年以上続く農家の5代目、尖農園(とんがりのうえん)の小谷大藏(こたに だいぞう)さんに焦点を当てます。
導入をサポートした弊社代理店『株式会社未来図』および2次代理店『合同会社 寺田』の寺田さんにも、導入の経緯や現場ならではの工夫について詳しくお話を伺いました。 小谷さんは、和歌山県田辺市で長年、梅と柑橘の栽培に取り組んできた経験豊富な農家です。ドローンを活用した先駆的な取り組みは、地元メディアでも大きく取り上げられ、注目を集めています。
5haの園地拡大が、変革への引き金に
「ミカン園を新たに5ha預かることになったのが、直接のきっかけでした」
これまで梅や水稲に加え、ミカン園もすべて手作業で防除を行ってきた小谷さん。管理面積が大幅に増えるにあたり、作業の効率化は急務でした。そんな折、田辺市内にて開催されたスマート農業実演会で農業用ドローン『P40』を見る機会があり、一目ぼれし、その性能に大きな可能性を感じ、県の補助金を活用して導入を決意されました。

ドローンが最大限に能力を発揮できる園地へ
小谷さんが預かったのは、山間の段々畑。安全かつ効果的な散布を実現するため、約4ヶ月にわたる「園地の最適化」が行われました。
- 課題:
- ・海風からミカンを守る防風林の高さが不均一で、ドローンの飛行を妨げる。
- ・園地内に突出した木があり、接触のリスクがある。
- 対策:
- ・防風林をミカンの木と同じ高さに剪定。
- ・飛行ルート上の障害となる木を伐採。
これらの作業は、和歌山県でいち早くミカンのドローン防除を実践し、豊富なノウハウを持つ『合同会社 寺田』の寺田さんによる的確なアドバイスのもと、進められました。
【ミカン栽培の生命線】収穫まで続く、年7回の防除作業

ミカン栽培で特に注意すべき病害虫はなんですか?
「葉や実に深刻な影響を及ぼす『かいよう病』や『そうか病』、そして『カミキリムシ』や『カメムシ』などの害虫対策が欠かせません」
具体的な散布スケジュールを教えてください?
「高品質なミカンを育てるため、収穫までに約25日間隔で合計7回の薬剤散布(2025年実績)を行います。特に花の開花時期から防除は始まり、安定した収穫のためには欠かせない作業です」
散布例(2025年)
5月
・5/13 ——殺菌・殺虫
6月
・6/7 ——殺菌・殺ダニ
7月
・7/25——殺菌・殺ダニ
9月
・9/1 ——殺菌
・9/15 ——収穫
※雨量が200mmを超えると薬剤が流れてしまうため、散布のやり直しが必要になることもあり、天候次第では作業負担がさらに増えるというお話でした。
山の地形を攻略する、ドローンの操縦術

山間の不規則な園地では、どのような工夫をされていますか?(寺田さん談)
ミカンの木の並びが山に沿っているため、飛行ルートが自然と不規則になります。そのようなルートでも先端にまで薬液がしっかり散布されるように、ルートを自由に設定できる「フリールート」を利用し、飛行するルート作成をしました。
———ドローンを飛行させるルート作成は「往復ルート」と「フリールート」の2種類あります。その内の「フリールート」は、ドローンを散布させたい場所に自由にルートを作ることができます。

散布に関しては、どんなことがポイントになりましたか?
「ドローンは、設定したルートに対して正確に散布量を調整できます。農薬ごとに定められた規定量を守り、木の状態に合わせて無駄なく散布できるため、農薬使用量の削減にも繋がっています」
飛行高度・速度は、どのように設定していますか?
「ルート内で最も高い木から4〜5m上空を、秒速2mで飛行させています。この設定で、山間部でも安定した散布の実現に繋がっています」
(山間の不規則な地形にも柔軟に対応しています。)
「疲労はゼロに」。生まれた時間で、より良い園地作りへ


手作業の時と比較して、何が変わりましたか?(小谷さん談)
「作業時間の大幅な短縮はもちろんですが、何より肉体的な疲労が劇的に減り、ゼロに近いほどです。農薬の散布量も適正化され、コスト削減も実現しました。空いた時間で草刈りや木の剪定など、より丁寧な園地管理ができるようになったのが嬉しいですね」
「また、自身の経験を活かして近隣農家の防除作業を請け負うこともあります。微力ながらも、地域の農業を守る一助になれていると感じています」
ドローンが、山間部農業の希望の光に
和歌山県のミカン農家の約7割が高齢者であり、後継者不足は深刻な課題です。炎天下の中、薬液を浴びるリスクと隣り合わせで行う手散布は、特に過酷な重労働。この「消毒」と「草刈り」の負担が、多くの農家を悩ませています。
「ドローンによって消毒作業の負担だけでも軽減できれば、『これなら、まだ続けられる』と希望を持つ農家さんは確実に増えるはずです」と寺田さんは語ります。ドローンは単なる効率化ツールではなく、地域の農業を未来へ繋ぐための重要な一手となり得るのです。
【思わぬ効果】ドローンの風が「摘花」も手助け!
有田地方の農家からは、こんな喜びの声も届いています。 「ミカンの摘花(余分な花を落とす作業)と薬剤散布の時期が重なるのですが、ドローンの力強いダウンウォッシュ(吹き下ろしの風)が、散布と同時に花を効率よく落としてくれるんです。まさに一石二鳥ですよ」
ドローンは、私たちの想像を超える形で、農業の現場に新たな価値をもたらしています。
【まとめ】
4ヶ月にわたる園地整備を経て、農業用ドローン『P40』の導入を成功させた小谷さん。年間7回にも及ぶ過酷な防除作業の負担は劇的に軽減されました。その成功は自身の農園に留まらず、請負防除を通じて地域の仲間を助け、和歌山県のミカン栽培の未来を照らす光となっています。
■導入事例のご協力をいただいた方はこちら(画像・情報 提供)
[一次代理店]株式会社 未来図(全国エリア対応)
担当:藤戸(ふじと)さん
[二次代理店]合同会社 寺田(近畿エリア対応)
担当:寺田(てらだ)さん
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代理店一覧
■P40の製品情報
P40
■P40の動画(YouTubeに移動します)